ステンレス表面の酸化被膜

はじめに

ステンレス製のスプーンを舐めたときに、何とも言えない痛いような痺れるような感覚があり、どうやらステンレス表面の酸化被膜が取れているのが原因だったみたいなので、詳しく調べてみました。

ステンレスについて

ステンレス鋼は、鉄を主成分として、クロムやニッケルを含有させた合金です。
ISO規格 では、炭素を1.2 %以下、クロムを 10.5 % 以上含む鋼をステンレス鋼と定義しています。

stainless steel、stain(錆)がless(ない)と英語表記されるように、錆に強い金属です。
金属自体が錆びないのではなく、含有しているクロムが酸素と反応し、金属表面に数ナノメートルの酸化被膜を形成することで、それ以上の錆びの進行を止めています。
衝撃などで酸化被膜が削られたとしても、空気中の酸素と反応し、しばらくすると再び形成されます。

酸化被膜の化学反応

ステンレスの酸化被膜が取れる原因は、物理的な衝撃だけではなく、化学反応によるものもあります。

金属にはイオン化傾向というものがあり、水溶液中での電子の手放しやすさに違いがあります。

イオン化傾向

イオン化しやすいほど、酸素と反応しやすくなります。
高校生の時に「金かるな まあ当てにすな ひどすぎん借金」で覚えた記憶があります。

ステンレスの酸化被膜は、クロム(Cr)と酸素でできているので、上表のクロム(Cr)より左側にある金属に対して酸素を渡す化学反応が起こりやすくなります。

実験

痛いような痺れるような舌の感覚が、酸化被膜が取れたことによるものなのか、それ以外(物質の付着など)なのか確認するため、スプーンを濡らし、アルミホイルを貼り付けてみました。

アルミホイルの主成分のアルミニウム(Al)と、酸化被膜の原因であるクロム(Cr)では、アルミニウム(Al)の方が酸素と反応しやすいので、水に濡らし接触させるとスプーンの酸化被膜から酸素が奪われ、酸化被膜がなくなります。

しばらく放置した後、舌で確認すると、スプーン先端付近のみに感じた感覚が、スプーンのすくう部分全体に広がっていました。これで、酸化被膜が取れたことが原因だと判明しました。

おわりに

そもそものスプーンの酸化被膜が取れた原因は、おそらく食品との接触だとは思うのですが、具体的にどの食品かは不明のままなので、気になるところです。

ちなみに、スプーンのすくう部分を「つぼ」と言うそうです。